海と少女と介護士と
窓の外をずっと見つめてる女の子が居た。

車椅子に乗った女の子。

青色の本を持っていた。

俺が近づくと、その子はにっこり笑って

「私、空谷海羅だよ。よろしくね。お兄ちゃん。」

少し照れくさかった。
【お兄ちゃん】と呼ばれて少しドキッとした。

「よろしくな。海羅。」

「変な名前でしょ?」

「え?」

「海羅って名前だよ。父さんと母さんは海が好きだから、この名前にしたんだって。」

「そっか。」

俺は何故か【海羅】と言う名前が好きになった。
この子も親譲りで海が好きなのだろうか?なんて事も思った。


好きだって事はすぐわかった。


海羅が持ってる本。
透き通るような青色のカバーの本。

良く見れば海だった。


太陽の光に照らされながら本のページを開く。

ページいっぱいに描かれている大きな海の絵。

青や水色、青紫。

多彩な色で描かれている。


魚が居て、貝がいて。


海羅は本を見ると笑顔になっていた。
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