狐の眠り姫

あやかしは、元来、闇の一族。
だが、混血の妖怪は純血種に比べ、存在自体が希薄となり、そのあいまいさ故に狂い死ぬ事も少なくない。
祖母が人間の俺に、祖父は「零」と名付けた。
ぜろ、つまり名で流れるこの血の影響を抑える呪とした。
しかし、狐は神に並ぶ霊力を持つ。
名によって人の血を無に還された俺は、純血種と同等の霊力を本能的に求めた。
十の年、俺は眠りながらにして、祖父、両親を手にかけ、その体を食った。
呪は、呪いとなった。
目覚めると、全身が血潮にまみれていた。
手にしていた物に気がついた瞬間、俺は狂った。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
握りしめていたのは、母さんの引き裂かれた衣だった…。
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