狐の眠り姫
「レイって、どういう字で書くの?」
葉にそう聞かれて、俺は地面に拾った枝で自分の名を書いた。
「零?」
彼女は目を丸くして見ていたが、「変わった漢字を使うのね。」と言った。
その言葉に「ああ。」と呟くと葉は寂しげな笑みを浮かべた。
「…由来とか、あるの?」
………由来?
…あったさ。立派なのがな。
多分、魔が差したのだろう。
憑かれたように全てを彼女に語っていた。
蝉が、ひときわ大きく鳴いた。

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