狐の眠り姫
「レイ。」
レイは、瞳を上げた。
読んでいた漫画を伏せる。
「私、レイのこと、好き。」
彼が苦笑した。
「なんだよ、突然。」
「私、本気だよ。」
そう静かに告げると、困ったような顔をされた。
心臓がどきどきしてる。
なのに、なんでこんなに悲しいんだろう。
レイが困るのなんて分かってたのに。
人間なんて、所詮恋愛対象になりえないって分かってたのに。
…あ、目逸らした。
だって。
好きなの。
大好きなの。
無謀でも、伝えたかったの…。
思わず、石段から立ち上がった。
無理やり笑顔を作る。
「冗談だよ!じゃ、また明日ね。」
レイが呆然としている間に走って逃げる。
ごめんなさい。
神様。
私は臆病者です。
涙が浮かんではこぼれる。

「…しょっぱいよ。」



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