† 黒猫とクラウン †
「な、なんだよ、蓮・・・?」

「お、お前の天然さにはまいった!・・・あはははははっ!」

蓮があんまり笑うもんだから、僕は少し怒って、

「なんだよ!僕が何かしたかよ!」

と怒鳴ってみた。

しかし、蓮は気にした様子も無く笑い続ける。

こんなに蓮をうるさいと思ったのは初めてだった。

『こいつを消したいのか?』

・・・まただ。

さっきのように、耳から、というよりは頭に直接響くような声。

「消し去る?」

『あぁ。こいつがうるさいんだろ?』

「・・・その前に・・・お前はだれだ?」

きいたとたん、声はぴたりとやんだ。

しかし、声がやんだとたん、手元の猫が前足を僕の手にのせ、顔を僕のほうへと向けた。
「お前か?」

猫は笑うように目を細めた。

信じられなかった。

いや、信じられるはずも無い。

猫がしゃべるなんてきいたことが無いからだ。

「千影、どうした?怖い顔して」

いつの間にか笑い終わった蓮が、僕の顔を覗き込んでいた。

「・・・蓮、この猫本当に僕に飼わせるつもり?」




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