マイスィートアフタヌーン
 彼に気が付かないのは、彼女だけである(たいていそうであるようだ)。

懇意にしている店主のマダムと、今、メアリーアンはカウンターを挟んで言葉を交わしていた。

目指して進むのはなかなかの技術だ。人々の間をすりぬけるようにして、やっと、隣にたどり着く。


「見つけた。どこに居けば見つかるのか、他はともかくそれだけでもメモに書いておいて欲しかった」

「フレディ! どうしたの? 一人なの? ミルトン先生は?」


マダムの笑顔に手を挙げて応える。
彼女は目の前のトレイにカップを一客増やし、さらにパイも一切れ加えてくれた。


「指示は果たしたと思っているよ。もっとも指示が明確ではないから、受け損なっていないとは言い切れないけれどね。とりあえず彼女はここには現れない。そんなことなら保証できる」
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