きみに守られて
シロは最後の日を
日曜日に選んでくれた・・。

ぼくは殆ど自力で
動けなくなったシロを
1日腕に抱いていたよ。

母さんに”もう川に捨てろ!”と
怒鳴られながら・・も、
抱きつづけた。

母さんが
いい加減あきれかえりぼくから
シロを奪おうとしたけど、
無言の抵抗で逃げるように家を出た。

まだ息もあったんだ。
体も温かかったんだ。

シロと二人きりになって
”シロ”って声をかけると
”ミャー”と応えてくれた。

とても小さい声で、
応えてくれたんだ。

近所に芝生が生えた空き地があった。
ぼくは、
シロの元気を確かめたくて
何度も何度も鼻を近づけた。

その度に残り少ない力を振り絞って
ぼくの鼻に応えてくれていた。

”ミャー”って・・
言ってくれた。

その時がくるのが怖く怖くてぼくは
名前を呼び続けた。

名前を呼ぶたびに律儀にシロは
鳴いてくれていたよ。

夕日が真っ赤だった・・。

そして・・そして・・

最後の呼びかけにシロは
声も出せず口だけを動かして・・
”ミャー”とは言ってくれなかったけど、
ぼくの声は聞こえていたんだ。

呼吸が止まった・・・。

シロ・・シロ・・シロ・・・。

一日中同じ態勢で
シロを抱いていたから
腕の感覚も麻痺していたけど、
それよりも少しずつシロの体が
硬くなって、

重くなっていくのが
辛かった悲しかった。

こっそり家にかえり
シロをぼくだけが解る所に埋めた。

親に気づかれないように、
墓標のない墓を作った。

家に入り母さんに
”ちゃんと捨ててきたか?”と聞かれ
”うん”と答えた。

この時の嘘はぼくを苦しめたよ。
今でも苦しめている。

とても、とても強くて優しい猫・・

シロ。       
  
    
「ぼくが受けた虐待は
最小限で
食いとめられていたのかもしれない。
皆がいたから・・・
勝手で嫌な言いかたかもしれないけど、
ぼくの代わりに
なっていてくれてたんだ。
きっと・・・。」

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