きみに守られて
母、公子は毎回健治の元から
逃げる覚悟で正樹を連れアパートを出る。
しかし徘徊している途中で思いなおし戻る。
そんなことを幾度か繰り返すうちに、
次第に死に場所を探すために
アパートの部屋を出るようになった。

ある日、公子は正樹の肩を抱きしめ

「人は何時でも、
どこからでもやり直せるからね」

と、言い残し、
薄ぐらいアパートの部屋に
正樹を一人残して出ていった。

二日後、
公子の水死体が港から発見される。
我が子に残した最後の言葉、
公子は自分の信念を貫き通せない程に
追い詰められていた。

「幼い俺は
投身自殺という意味が分からなくてな。
大人たちが口々に言ってたっけ、
投身自殺なんかしてよ、
折角の美人が台無しじゃねぇかってね。」

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