きみに守られて
(説明とかいうよりも、
まったく信用されていない、
当たり前だけど。
ぼくがお金持ちだったら
話し聞いてくれたかな・・)
気分は完全なる内側だった。

冷静な判断もクソもない、
染付いた悪習慣、
悪念は簡単には払拭できない。

ユリツキは十年分の感情の浮き沈みを、
ここ数分で経験し、
疲れ切っていた。

上半身だけで振りかえり、
離れ行く後姿を見送る。

一匹の三毛猫が彼女の前方を横切り、
彼女は猫を追うように小走りで
反対側の道路端へ行き、
しゃがんだ。

ユリツキには大島優里が
ビルの隙間に頭を挟んで
無邪気に喜んでいるように見えた。

少しすると残念そうに彼女は
立ちあがり再び、
元の道順へ歩を進める。

疲労感で夢心地に陥るユリツキは、
その大島優里の行動を
一部始終眺めていた。


(やっぱり、可愛い、綺麗だ。
まだ嫌いだと言われていない。
まだ、笑顔も見ていない・・)


彼女とすれ違った
サラリーマン風の男が立ち止まり、
その後姿をジッと眺めていた。
露骨な視線であることは察しがついた。

(行かなきゃ・・守らなきゃ・・)

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