同居以上、同棲未満。
第1章★事の発端

◆ボロアパート

そう、事の発端は数日前。5月19日の夜だった。



「利奈、利奈!寝てるの?」



祐樹の声でフッと我に返った私。



「…寝ちゃってた」



「疲れてるんだよ。そろそろ寝たほうがいいよ」



「寝てらんないよー。とにかく早く引越し先を見つけないと、この部屋じゃどうにもなんないもん」



祐樹が、確かにって顔をして、雨漏り対策の桶のほうを見る。ぽちゃーん、ぽちゃーんっていう音は、とっくの昔に聞きなれちゃった。



「でもさ、こんなに大家さんに頼んでるのにホントになにもしてくれないなんてすごいよね、ある意味」



祐樹はのん気にそんなことを言いながらテレビを見ている。 私はパソコン画面に向き直りながら、ヤケ気味にコーヒーをがぶっと飲む。


< 2 / 43 >

この作品をシェア

pagetop