黒王子と銀の姫
あの日、朦朧とした意識の中で、イリアは二人のやりとりを聞いていた。

策士、策に溺れるとはこのことだ。
グノーがいる限り、イリアが死んでも、アルミラ王家は滅びない。

グノーとの取引のことを、ユーリは口にしようとはしなかった。
グノーはグノーで一度も姿を現さない。

カリノ家の主だったものは王宮に詰めているのだろう。
イリアが傷を負っているせいか、警備は手薄で監視の目もそれほど厳しくなさそうだ。
イリアは何度もユーリを逃がそうとしたが、その度にユーリは首を横に振る。

「お前の従者が心配しているはずだ」
「私はあなたのそばにいます」
「リタニア王女としての責任を果たせ」

強い口調で言ったところで、困ったように微笑むだけだ。

ユーリが扉をノックすると、地下室の扉が外から開く。

そうやって、必要なものを調達してくる少女を陰気な地下室に縛り付けているのは、間違いなくイリア自身なのだ。




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