黒王子と銀の姫
頭がすっきりするにつれ、自分が引き起こしたすべてを思い出し、ユーリはいたたまれない思いで目を閉じた。

「・・・ごめんなさい」
「謝ってすむか!」

「この手、腐ったりしませんか?」
包帯をぐるぐる巻かれた手に視線を落とすと、クリムゾンに頭をこづかれた。

「くだらない冗談を真顔で言うな! 手どころか、処置が遅れたら、死んでいたかもしれないんだぞ!」

冗談を言ったわけではなかったが、相手のすごい剣幕に押されて涙ぐむと、ぐしゃぐしゃと髪をかきまわされた。

「もっと自分を大切にしろ! 頼むから・・・」

イリアに言いたかった言葉を、クリムゾンに言われてしまった。

疲れたような相手の顔を見ていられなくて、ユーリは逃げるように顔を背けた。
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