黒王子と銀の姫
キリシュの母親は上級貴族に辛うじてひっかかっている程度の身分だが、第二王子ミカエルの母方は、莫大な財力を誇る新興貴族の家柄だ。

一番年長で王位継承権第一位のキリシュが、五体満足で生きているのは、彼を取り巻く者たちが、その存在をひた隠しにしていたからだと聞いている。

金髪の眉目秀麗な王子は、幼い頃は小姓として、長じてからは近衛兵として、常に国王のそばにいた。

残る二人の王子のうち、第三王子のセナの母親は、高位高官を次々と排出している名門中の名門、カリノ家の人間だ。

カリノ家は、本来なら王家に側室を差し出すような家ではない。

一人娘を側室として差し出す気になったのは、正妃が子に恵まれなかったためだったが、生まれた王子は身体が弱く、王位を継ぐことは難しいとされている。









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