幾千の夜を越え
1st 離脱
俺の下で鳴く女の名前を
俺は知らない。

「はっ…あっん…」

さっき初めて会って告られた。

「んっ…好き…右川…くぅん」

そのままホテル直行。

「あっあ…ダメぇ〜」

女の反応なんて気にも止めず、
欲望をぶちまける。

快感に身を奮わせ顔を歪め
見苦しく果てた女を尻目に

躰の爽快感とは別に情の喪失感に襲われていた。

絡み付く腕を払い除けシャワーを浴びに行く。


長い溜め息を吐き出し、

空虚感に支配される。

バスルームから戻っても、
裸のまま横たわる
女の頭上から
万札を5枚蒔く。

「部屋代…釣りは手切れ金」

濡れたままの髪で後にした。

二度と会うことの無い女。
顔も憶えてねぇ女。

これで何人目だよ…。

高校入って直ぐ始まった情事。

映画監督を父にハリウッド女優を母に持つ俺は金にも容姿にも恵まれてる。

言い寄る女を、片っ端から食ってやった。

見境なく。

お陰で付いたあだ名は、
『バージンキラー』
ってダッセーまんま。

処女が好きなわけじゃねぇし、
処女じゃなきゃ駄目ってことでもねぇ。

唯年齢的に処女が多いってだけ。


俺が欲しいのは…

今までも恐らくこれからも変わることはねぇ。

俺が求めんのは…

唯一絶対の存在

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