幾千の夜を越え
三つ目の石の記憶を映し出した。

「右近…」

「何だよ?」

向かい合う2人の少年の1人が頭で手を組みそのまま後ろに倒れる。

「つまらんな…」

左近と呼ばれた少年はそのまま天を仰ぎ見たまま口を閉ざした。

「…忘れたのか左近?
直にあの裂目から亡者が大挙して這い出てくるのだぞ!」

勇ましい顔付きで岩を指差す。

「そんなの…」

勢いよく立ち上がり左近が右近を見下ろし。

「俺が知るところではないだろ!何故人間などちっぽけな者などを守らねば為らんのかわからん!」

一息にまくし立てる。

無言で見上げたままの右近に
左近は痺れを切らし胡座をかく。

「本当に…人間など居るのか?」

左近の疑問に右近は笑った。

「何だよ左近、人間を見てみたいのか?」

右近の笑みを残し消える。

「尊が居ない…」

産まれた時から葵と共に育った
俺の傍に葵の存在が居ないことに違和感を覚える。

「初代の右神と左神には尊という宝は存在しない」

右神、左神…。

この時点では2人が神だった?

「正確には神の耳から産まれた…分神だけどな!」

1つの木の幹に手を当て奴が呟く

「彼女は繊細な記憶を教えてくれるそうだ」

その幹を労る様に優しく擦り、
そっと手を離す。

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