幾千の夜を越え
午後の授業も請ける気にならず、

普段は忘れられがちな、
薄暗い階段を昇って行く。
旧校舎を増築し
新校舎を広げた
古い学校の校舎には、
北階段と南階段がある。

南階段は広げた側の
新校舎の端に有って
陽の光も射し込む、

教室も近ぇから、
通常使われる階段で

北階段は古びた側の
旧校舎の端に有って
日陰で辛気くせぇ、

実験室に近ぇからか
普段使われることが無い

唯一屋上へと繋がる階段だ。

旧校舎側ってことも有って
『立ち入り禁止』の
札がぶら下がるだけ…。

この薄気味悪ぃ階段を昇って、

わざわざ来る価値もねぇ屋上に

来るような物好きは

「やっぱ俺だけか…」

錆び付いたドアを開け、

外の風を浴びる。

伸びと共に深く吸い込む。

「煙草吸ってみっかな…」

独り言も屋上の強い風に、
直ぐに溶けて消える。

周りの悪友が吸ってる中でも、
俺は固くなに拒否り続けたのは、

葵が嫌がるからだった。

どんなに誤魔化そうとも
煙りに撒かれ移る臭いを

葵は敏感に感じとる。

一度でも吸っちまえば、
指に臭いがこびり付くんだと。

その手で触れることを、
葵はマジに拒絶してた。

今は…
気を咎めるモノが何もねぇ。

飯の時間を気にして、
ホテルを出てくる必要も…

噂が耳に入らねぇように、
念入りな口封じの必要も…

何もねぇのに、

俺は、
消沈しちまったみてぇだ。

唯の衰残の情けねぇ男に
なり下がっただけだ。

衰微して見る影もねぇ。

何が穏やかだよ…。
言い聞かせてるだけじゃねぇかよ

くだらねぇ。

悪いが、
ヤリてぇ盛りなんだよ。

紛れもねぇ、
性少年なんだよ。

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