幾千の夜を越え
4th 妙技
瞬く間に広がった告白劇は、
尾ひれが付き羽でも生えたかと
疑われるほど独り歩きを始めた。

「慎ちゃん…」

俺の寝室で俺の両手両足に
すっぽりと収まってる葵は
自分の状況を理解してないのか
無防備にも警戒心をまったく
見せなかった。

「何?」

唇が付きそうな距離で囁き返す。

それ以上何も言わず見上げて
見つめ続ける葵に
ゆっくり降ろしていく。

「ホントは茜が好きなの?」

唇が掠める瞬間に葵が
衝撃の発言をする。

「はあ〜?」

無駄にデカく防音防犯対策には
万全な我が家でなければ近所から苦情でも来そうな絶叫が響く。

「何訳解らねぇこと言ってんだ?この状態のどこに疑う余地があんのか解んねぇ!」

俺の剣幕に葵が戸惑いを隠せず。

「だって…だって…」

おどおどしている。

葵を腕に閉じ込めた。

「聞こえる?俺の音…」

胸に耳を当てて葵が頷く。

「ドキドキしてる…」

葵の発言を受けて答えた。

「こんなんさせられんの葵だけだ…何を心配してんのか知らねぇが何でも俺に言えよ?
葵の不安がなくなるまでずっと…いつでも抱き締めてやるから」

とはいえ…
これはかなりキツイ。
胸の膨らみが俺の胸に当たってる感触に意識が行ってしまう。

否応なしに反応する躰は逆に
葵に当たってないだろか?

俺が絶食してから一月近くたつ。

今までが一日と空けずの間食食いだっただけに

躰が非情にも求め訴え掛ける。

駄目だ!
葵はんな簡単な女じゃねぇ!

他に意識を集中させるべきだ。

「慎ちゃん…左山君が告白した話知ってる?」

葵が微かに動き俺を見上げた。

「ん?」

ヤバい今動いたせいで確実に、
当たってる。

「告白されたのは茜何だって…」

大丈夫だ例え当たってても葵にはソレが何かまでは解る筈がない。

< 46 / 158 >

この作品をシェア

pagetop