幾千の夜を越え
転校生が珍しいのか、
聞き慣れない関西弁か、
今朝から左山は女子の視線を集め囲まれていた。

まぁ、見た目も大いに関係あるのだろうが。

俺は奴のお蔭で放課後の教室を
いつもより数段速く脱け出し、
約束通り美術室に足を運ぶ。

そういや、葵に全裸モデルしてるなんて言ってねぇけど…。

態々言う必要ねぇよな?

アイツの事だ多分…

「慎輔アンタヌードモデルしてるって聞いたけど本気なの?」

廊下に響き渡るデカイ茜の声に、振り返る。

「何よその嫌そうな態度は?」

何故か不機嫌丸出しで睨んでた。

「声がデカイんだよ…。
野次馬が増えんだろ!」

それが納得いかずに睨み返す。

「調子に乗ってんじゃないの?
葵に話してあるんでしょうね?」

いきなり核心を捕まれた気分だ。

「そのうちな…」

決まりが悪い俺は
はぐらかそうと呟いた。

「アンタ葵の気持ちも少しは考えたらどうなわけ!
今朝なんてまだ夜明け前から支度始めてアンタん家に向かったの」

道理で…。
美味い朝食にありつけたって訳。

食い物の怨みは怖ぇって言うしな

すっかり質素な朝食の腹いせを
されてるんだろうと思った俺は、

「悪ぃな茜。ご馳走様でした」

合掌して頭を下げた。

「私にしてどうすんのよ…」

呆れ顔の茜に背を向けたその時、

「何や右近エライ別嬪さん連れてるんと思いよったら尊さんやん。流石手の早いこっちゃな…」

左山の声が後ろから追い掛ける。

また意味の解らねぇこと…。

「コイツは俺の女じゃねぇよ…」

左山は然も疑わしそうに茜の周りをジロジロと見渡す。

「尊に間違いない。
まだ右近の近くに…」

呟いたかと思えば
いきなり茜に頭を下げた。

「尊…左近です。
俺は貴女を忘れたことなんてない今世でも命に代えてお守りしますだから俺の女になってください」

熱烈な交際を申込んだ。

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