幾千の夜を越え
余りにも突然でその勢いに圧され一瞬動きが遅れる。

「なっ!何すんだ」

ズボンに手をかける左山の手を
振り払うが尚も手を伸ばす。

「暴れんなや!」

「ふざけんな!」

振り払っても振り払っても
物怖じするどころか挑む様に
引き摺り下ろそうと手を伸ばす。

「止めろこの変態!」

「誰が変態やねん!アホ吐かせや大人しぃせぇちゅうねん!」

態勢が悪い。

どう考えても壁際に踞った俺と
それに覆い被さる形の左山では
圧倒的に不利だった。

事実圧され気味だったのが徐々に乱れ始めたフロントで解る。

「何考えてんだ…」

「ええから見せえや!」

「だから、何をだよ?」

「右近の絵…見て来たで」

絵?
俺がモデルの裸体画のことか?

「人が仰山おって…
まあ大半は興味本位やろな?
然し知っとっても何処が右近なんかわからんわ」

それが何の関係があるのか解らず左山の話を黙って聞いている。

というよりは僅かな身動きさえも取れずに囲まれている。

「そん中の一枚にプロ並みの絵があってな右近を知り居らんでも…右近の絵や解りおる」

そりゃ恐らく展覧会用に描いた
部長の絵だろう。

「そないなことどうでもええねんそれよりも面白いんはどの絵にも共通点があったちゅうこっちゃ」

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