悲しき恋―時代に翻弄されて―

おばあちゃんが大切そうに白い手袋を嵌めてから木製の箱を開けた。
中からは大分年季の入った本のようなモノが数冊出てきた。

「これが、我が家のお宝だよ。」

「…それが?」


「これは、先祖さまの日記よ。」

「ふーん。」

想像してたお宝はキラキラ輝く金がいっぱい、なんて幼稚園園児のころの私はそう思っていた。

「この頃はなにもなかったのよ。」

「なにも?」

「そう、なにも。電気もガスもなくてね…コンビニだってないのよ?」

「じゃあテレビも?」

「そうだよ。」

信じられなかった。今の豊かな生活からそんなこと想像さえできなかった。

「おばあちゃん、ご先祖さまの日記にはなんて書いてあるの?」

おばあちゃんは小さく笑みを浮かべて、話しはじめた。
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