悲しき恋―時代に翻弄されて―
空はどこまでも無限に広がっていた。その下で人間は我が物顔で地を奪い合う。

なんて愚かなのだろう。千与は空を見上げるたびに人間の愚かさ、ちっぽけさを痛感させられた。

ここから少し歩けば、青い海がどこまでも続く。
神がこの世をお造りになった。なんて素晴らしいのだろう。千与はそうより信仰心を深めていく。

「―行かん。」

思い立ったらすぐ行動に移す。後悔はしたくない。
そんな性格の彼女はそう呟くと足を一歩踏み出した。

…海など幾度も行っておらぬな、と懐かしい気持ちになりながら、鼻歌を歌った。
その頃にもちろん曲などなかったけれど、そのときの気分で名もないメロディーを口ずさむのが彼女の癖。

その僅かな時間だけが現実を忘れさせてくれた。彼女の壊れそうな心を支えていた。
< 50 / 76 >

この作品をシェア

pagetop