【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
心なしか私の歩く速度が上がったのは、断じて自己保身のため。
決して『ナツキがもう挨拶への遅刻が決定していようと、少しでも早く』と思ったわけじゃない。
私は一刻も早く、ナツキと共に歩いてることで被る視線から、離れたいだけ。
安寧を求め、教室という場所へ逃げ込みたいと思っているだけなんだから。
ナツキは、ヒロシ先生にいくらでも怒られればいい。
でも、のんびり女子生徒と歩いて目の前に現れるのと、
息せききって目の前に現れるのとでは、
先生の心証はかなり違う筈だ。
校門を抜けたところで、私は更に歩を速める。
「結香チャン、いきなり歩くの速ぇよ」
「普通です」
「速ぇよ、結香チャーン」
「普通ですったら。というかそんな大きな声出さないで下さい」
全然余裕で追い付けるくせに、「朝から疲れてらんね」とナツキは徐々に遅れ始めた。
もっとも私としては、それで良いのだけれど。
「結香チャーン」
「おいおいシカトかよ、結香チャーン」
「結香チャーン?」
「結香チャーン!」
ああもう、名前連呼しないでよ……っ