【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


えっ、と声が喉に詰まった。


への字に口を結んだ秋月会長は、とても勧誘には程遠い顔だけど、

映画に誘われてる、と受け取って、いいんだよね……?


じゃあさっきのチケットも、余ってたとか、そういうんじゃなくて、

私を映画に誘うために……?



でもどちらにしても、秋月会長からしたら、お詫びなわけで。


そう考えたら、なんだか素直に喜べないというか、気落ちしてしまう自分がいるというか。



……待て。

喜べないってなんだ。

気落ちってなんだ。



そうだ。彼氏がいたことのない私は、デートに誘われるなんて初めてだから、それがこんな『お詫び』である事に気落ちしてるんだ。きっとそう。


デートという言葉が浮かんだ自分に、信じられない気持ちでいっぱいになる。



「おい」


固まった私を、秋月会長が覗き込んだ。


突然の近距離に、心臓が跳ねる。


「ああああのっ……あたし、そんなに気にしてませんから」


しかしその返しはお気に召さなかったようで、秋月会長から「あ゛?」と鋭い視線が突き刺さった。


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