【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
「……ったく。手間かけさせんな」
秋月会長は尚も何か言ったけど、それはヘルメットのシールドを下げた音で消えてしまった。
シールド越しじゃ、表情も読み取れない。
手間って何、と突っかかるには思考はまださっきの言葉に捕らわれ過ぎていて。
でも引っかかって。
まだ棒立ちになったままの私に、秋月会長は言った。
「いいから乗れ」
今度ははっきり聞こえたから、聞こえなかった言葉はもしかしたら私に対してではなく、ただの呟きだったのかも。
そう自分を納得させて、私はバイクへと一歩踏み出した。
走り出したバイクのエンジン音と、流れる景色は、
来た時と同じなのに、
心をきゅっと締め付ける。
逆を辿ることで景色が違うから、違和感があるのだと、
だから心がざわめくのだと、
私は自分に言い聞かせた。
『ウゼェ』と言われた事を、まだ引きずっているからだと、わかってたけど。
勝手に私のことを振り回しておいて、ウゼェだなんてよく言える。
そこにあるのは、理不尽な言葉に対する怒りだと、
私は思っていた。
それ以外の理由なんて、ない。