金魚玉の壊しかた
二十一世紀を生きる諸君よ、

三世紀も前に存在していた世界では、武士というものは身分が高ければ高いほど、犯した罪に対する罰も重かったのだ。


用水普請の算盤計算を間違えて上役が切腹なんてザラ。

そんな時代に家老の身で敵対勢力の謀殺などと、

またハイリスクな真似を……



やってしまった。


やってしまわれましたか、父上。



いや、例えやっていなかったとしても──

疑いがかかった時点でアウトな立場だ。


斬首、お家断絶は免れないだろうと家族も覚悟を決めた時、

救いの手は意外な所から差し伸べられた。



父に殺されかかったという唯一の生き残り、
当の被害者である伊羽青文。


家老ともあろう者にこのような疑いがかかること自体あってはならぬ不始末、

しかし確かに黒幕だという証拠も不十分である故に──

──と彼は殿様に、

本人には切腹、
お家は減石処分に留めおくが宜しかろうと進言したのだそうだ。



まったく、嬉しくて泣けてくる話だ。


まさか敵にこんな形で救われるとは。

父にとってこれ程の屈辱もなかっただろう。
< 6 / 250 >

この作品をシェア

pagetop