未来のない優しさ



もし、罪悪感という後ろ向きな感情があるとすれば、健吾よりも私の中のその感情の方が格段に多いと思う。

事故にあってしまった現実を受け入れる事以上の悲しみは…。

健吾を信じられなかった自分自身。

愛し愛されてるっていう安心感に包まれていたのに、健吾が他の女の子と出かけていた事が許せなくて悲しくて。

責めてしまった…。

『私一人じゃだめなんだ』

初めての大きな喧嘩で言った言葉は、健吾の心を大きく傷つけてしまった。

『信じられないなら、別れてもいいぞ』

悲しい光をたたえた瞳を私に向けて言った健吾は、言った瞬間に

『しまった』

と表情に出したけれど。

お互いの若さが、お互いの言った言葉を取り戻せなくて…。

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