未来のない優しさ
「で、どこ?」

ソファにもたれて聞いてくる野崎くんは、妙に穏やかに笑っていて、まるで私の転勤を喜んでいるようにも見える。
期待はしていないけど、寂しい。

「…春井市」

ここから車で2時間ほどの街に異動する。
今月いっぱいでこの部屋も引き払う。

「春井か…。ここからじゃ毎日通うのは無理だな」

「…うん。もう、新しい部屋も決まってるしね。頑張らないと…」
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