赤い蝶々

乳癌

彼の嫁が乳癌になりました。
ざまあみろと内心思いました。

死ねばいいさえ思い彼の不安げな顔が頭から離れなかった。

幸い初期症状な為手術すればよくなった。
運が良すぎる彼の家族が腹立った。

彼は私に嬉そうに話す。

『嫁さん明日手術やねん。ほんま良かったわ』
私は
ふーんとしか言わない。

彼が謝る。

些細なことなのに苛立つ。
『ういごめんな』

怒っている理由すら分からないくせに謝る。

私の体にもじわっと少しずつ異変が起きる。

季節は11月の冬。

意識がない寝ている時に胸をかいてしまい、湿疹ができる。
市販の薬でも間に合わない。
病院へ仕方なく行く。

『パジェットだね』
ん?
なんやそれ。
先生に説明を受け、胸の皮膚を五㍉位採取する。

痛みはほとんどない。

癌になってしまった。
どうしよう。
頭に最悪なことしか出てこない。
死ぬかもしれない。

一気に痩せた。
怖い。

彼に言わなかった。

どうせ話しにならないから。
どうせ分かってもらえないし、私一人で戦おう。

そんな強がりは続かなく、店は休みがちになり外に出るのが少なくなった。

皆私が癌て知ってるんや、と被害妄想。

下着をつけると湿疹の汁に下着がくっつく。
汗をかく恐怖が強くなりいつも寒くしている。

シャワーすらプール並の温度でちょうどいい。

両胸、乳頭はまさにぐちゃぐちゃ。
薬も高い状態で休みがちな店にお金を借りないと、無理だった。

好き勝手している私には親に言うほど、お金は頼れなかった。
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