クロスロードラヴァーズ
翌日の夕方、不和虎(ふわとら)公園。
「五分前行動か。いい心がけだぜ、郁。」
左腕に付けた腕時計で時間を確認し、火槌がニヤリと笑いながら言った。
前髪の中で一部だけ赤い部分が夕日に当たり、更に赤く見える。
「……約束通り、来たで。早よう、オレのケータイ返してや!」
郁は右腕を真っ直ぐ前に伸ばし、手のひらを上に向けた。
火槌とは、一メートルほどの距離をとっている。
「返す前に確認だ。下準備に抜かりねえよな?」
「あるわけないやろ。罪悪感はめちゃくちゃあるねんけど……梓はんのためやから。」
「よしよし、よくやったな、郁。あとは日曜日が来るのを待つだけだぜ。」
「誉め言葉は要らん。ええから、ケータイ返して言うとるやろ!」
火槌の悠長な態度に、郁は声を荒げて手をグイと前に突き出す。
「そう慌てんな、郁。まだ約束の時間になってねえぜ?」
火槌は腕時計に視線を落とす。
短針は六を指しているが、長針は十二にわずかに届いていなかった。