クロスロードラヴァーズ



(うっとおしい……。自分が原因を作ったくせに。)


止まない声かけとドアが軋む音を聞きながら、梓は心底嫌そうに顔を歪めた。



「梓ちゃんってば!お願いだから開けてよ!」


涙声になりながら尚も声をかけ戸を叩く柚枝。

しかし、その努力さえも今の梓には無意味で迷惑な行為に感じられた。



(放っといてくれればいいのに。)


そう思いながら、梓は何気なく地面を見下ろす。


屋根から地面までの距離は、十数メートル。

それなりに高いが、落ちた所でよほど打ち所が悪くなければ命に関わる大事故にはならないだろう。



「死ぬのも生きるのも面倒くさい……。面白いことないかな……。」


茶色いウェーブ髪を風に靡かせながら、梓は赤いカラコンが入った瞳で遠くの山をぼんやり眺めた……。


そもそも、なぜ梓が屋根の上に居るのかというと、それは彼女が心で呟くように兄とのケンカが要因だった。
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