恋するために生まれた
ナオとの待ち合わせは
いつもあのバーだ。
今日はまだナオは来ていなかった。



「どうかした?」

マスターが俺の顔を覗きこむ。



「いや…どうして?」

「なんだか顔が暗いからさ」

「そんなことないさ」



ナオが来たら
何を話そう。

妻の妊娠のことは
言わないべきだろうか。



そんなことを考えあぐねていると
バーの扉が開いた。



「こんばんは」


ナオの笑顔。


このまま、連れ去ってしまいたい。
二人で、誰も知らない町へ
行ってしまいたい。



「何かあった?」

「いや…」

「いつもと違う」



ナオに正直に言うことは
きっとナオを傷つける。
だけど
隠したままでいられるのか?
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