無花の桜木
無花の桜木
今から遥か昔の日本。



京の外れの小さな村に、年頃の美しい娘がいた。



母親譲りの白い肌に、艶やかな黒髪が映える器量良し。

それに加えて明るく、心の優しい娘だった。



娘には働き者の父、病弱な母、そして男の幼馴染がいた。



娘と幼馴染は同い年で、2人は幼い頃から共に時間を過ごしてきた。

まるで兄妹のように仲が良く、そんな2人は、成長するにつれて想い合うようになっていった。



そんな微笑ましい2人は、村でも公認の仲だった。

年頃の娘と男の間に縁談の話が出るのも、当然のことだった。



娘は、幸せだった。

決して裕福な生活ではなかったけれど、大好きな両親と、大好きな幼馴染が居る…その事実だけで、娘は幸せを感じていた。



誰もが思っていた。



2人が一緒になること。

2人が幸せになること。


しかし…。
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