ジュリエットに愛の花束を。


「……なに?」

「昨日も思ったんだけど、瑞希、いつもと感じ違うよな? 

服もメイクも……なんかあった?」

「……なにも」


そういう事には男って鈍感だと思ってたから、気付かれて驚いた。

確かに、気合いは入れてるけど……でも、そこまでメイクを濃くしたわけじゃないし。

マスカラ二重塗りしたくらいだし。

あとは、ちょっと高級なグロスに変えただけだし。


「でも、瑞希いつもはそんな短いスカートはかないだろ。

電車で一回痴漢に遭ってから嫌がってたろ」

「……まぁ、そうだけど。もう時効かなって」

「……ふーん」


明らかに疑惑の眼差しを受けながら、白々しい嘘をつく。

本当は、格好だけでも女の子らしく! とか思ったから、珍しく短いスカートはいてきたんだけど。

だけど、そんな事は樹には言えるはずもなくて。


目を逸らしながら言ったあたしに、樹の視線が突き刺さる。







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