ジュリエットに愛の花束を。
「じゃあ行くから」と、ちょっと強引に会話を終わらせた樹が、あたしの肩をぐいっと抱いて駐車場までの道を進ませる。
後ろを振り向くと……こっちを見ているアリサさんに気付いた。
会釈をしたけど、アリサさんは気付かなかったのか、ただこっちを見てるだけだった。
その目が、なんだか意味深で……頭に焼き付く。
眺めるわけでもなくて、妬むような感じでもなくて。
まるで、憧れみたいに見つめてくる瞳が、頭から離れようとしなかった。
車に乗ってから、樹は深いため息をついた。
そして、さっきまでの沈黙が嘘に思えるくらいに話し出す。
「あー……あいつ、苦手なんだよなー、俺。
瑞希の事、なるべく紹介したくなかったのに……くそ。なんでタオルなんかわざわざ届けにくんだよ」
「……樹が神経質だって知っててそうしてくれたんじゃないの?
っていうか、別に普通の人っぽかったけど……嫌う要素があるの?
っていうか、アリサさんって本名?」
すっかりいつもの調子に戻った樹に安心しながら言うと、樹は運転席の背もたれに寄りかかりながら天井を見つめる。
「本名だよ。確か。みんなから『アリサ』って呼ばれてるから名字知らねぇけど」
「へぇ」