ジュリエットに愛の花束を。
【第三章】

事の始まり



「瑞希ちゃん。あたし、分かっちゃった」


翌日の大学。

いつもとは違った声のかけ方をしてきた皐に、あたしは顔をしかめた。


「……なに? ラリアットされるより怖いんだけど」

「瑞希が、学食のプリンを食べない理由。

不思議だったんだよねー。松永にもらってるくせに、いっつも椎名先輩にあげてるから。

……でも、まさか、そんな理由だったとは思わなかったけど」


意味ありげに微笑む皐に、あたしは顔を背ける。


お昼休みの校内の廊下は、たまに生徒とすれ違うくらいで人通りが少ない。

食堂も購買も他の棟にあるのが理由かもしれないけど、それにしても少ない。


「別に理由なんかないし。ただ、なんとなく食べないだけだし」

「ふふー」

「……気持ち悪い笑い方しないでよ。

しかもそれ、意識してわざと「ふふー」って言ってるし。むしろ言葉だし」


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