フタリの事情。
「え、ちょ、何なに?
そこで止められたら気になるし、言ってよ?」


少しだけ、左右に視線を泳がせて。

一回の深呼吸のあと、まるで覚悟を決めたようにセナちゃんが小さく言った。



「……先輩は……
好きな人とか、彼女とかいるんですか?」


「へっ」


セナちゃん、そういうこと簡単に言うキャラじゃない……よな?

な、なんでんなコト急に聞いて来るんだよ~!?



「彼女はいないけど……
でも、すっ、好きな子はいる」



別に嘘つくことじゃないし、素直に答えたはいいものの。


……俺、もしか、今顔赤いかも。

好きな子を“りぃ”だって言ってるわけじゃないのに、何でこんな心臓、うるさいんだよ……



「そうなんですか……
変なこと急に聞いちゃって、ごめんなさい」


「う、ううん」


「あたしの友達……
関谷先輩のファンで、聞いてほしい、って頼まれてたんです。
なんか強く言われて……断れなくって」



あぁそっか、そういうことね。

はぁ、ビックリした。

< 49 / 89 >

この作品をシェア

pagetop