お家に帰ろう。
上手く明をかばった市川の背中は大きく、
明をすっぽりと隠したため、その時の表情を吉岡に見られることはなかった。


「こんなことになるなら、やっぱりやめとけば良かったっすね。」


そんな市川に、

(頼りになる男って、こーゆー奴のこと言うんだろうなぁ)

と、見せつけられた哲司も負けずに言った。


「余計なことまでベラベラ喋りやがって!」


これで、吉岡と遥も完全に終わっただろう…と思えた時だった。


「つかさぁ、おまえらは知ってんの?この女、援交してっかもよん。」

「な!!なに言って」


とっさに否定する明を押し退け、

「なに言ってんだテメ〜!!」

歯向かっていく市川は、


「ホントだって!見たんだよ俺、オッサンと歩いてるとこをさぁ!」

最後のアガキにも聞こえた吉岡の胸ぐらを、勢い良く掴んだ。


哲司が慌てて止めに入るも、おさまる様子がなく、
驚いた明は何も出来ずに、
ただ、それを見ているだけだった。


いつになく、もの凄い剣幕で立ち向かう市川を、必死になって止める哲司。

そんな状態を目の当たりにしているうちに…

つい、


「もうやだぁ!やめてって!あれはお父さんだから!あたしの、本当のお父さんなのー!!」


明は叫ぶような声で、事実を暴露していた。

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