お家に帰ろう。
上條家のリビングには、気まずい空気がたち込めていた。


考え事をするときの癖なのか、
キッチンからダイニングまでを、落ち着きなく行き来する弥生。


そんな様子を、食卓では哲司が、テーブルに肘をついた両手で、頭を抱えたまま目だけで追う。


遥はソファーに座り、ただ正面をボーっと眺めている。


明の出生の事実を聞き、言葉を失う二人を含む、三人は、
それぞれ違う角度から、同じことを考えていた。


「マサ君…見つけられたかな?」

時計を見ながら哲司が呟く。


「どうかしら?…連絡がないから…」


そこで、遥がやっと口を開き…

「まーくんには、いつ頃この事を話したの?」


コレには慎重に答えなければならなかった。


「…高校の時よ。バイクの免許を取るのにね…でも、あの子は知ってたの!偶然、聞いてしまったらしいのよ…私達の話を…」

「じゃあ、明はマサ君から聞いてたんすかね?」

「こんなこと言えないって言ってたんだけど…」

「あの二人、仲いーから。」

「ほっとけなかったんだろ?きっと…」


哲司の言葉に

将人こそ、明の気持ちが分かる一番の理解者なのだと、信頼を寄せる弥生は、

将人の事実までは、まだ知らない二人を横目に、

なぜかは分からないが、
なんとなく、将人が見つけだしてくれるような気がしていた。

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