お家に帰ろう。
将人が明の出生について知ったのは、
小学6年の時だった。


それは、
弥生の妹で、明の実母である葉月の三回忌のこと…


まだ何も知らない子供達は、
叔母の法事と聞かされて参列していた。


親戚達と揃って墓石に向かった時、
そこには既に花が供えられており、
それを見た大人達が、不思議そうにしている様子を、
将人は見逃さなかった。


その夜

なんとなく寝りの浅かった将人は、水でも飲もうと、階段を下りて行く途中、
親達が何か話しているのに気付く。


討論と言った方が近い、その口調に、
もちろん、将人は足を止め、
身を乗り出し、耳をすませる…



「関口君だと分かったんだ!それで良いじゃないか!」


“関口”とは、葉月が嫁いだ先の名字。


つまりはこうだ…

仕事で都合がつかなかった生前の旦那が、一足先に来て花を供えて行ったらしい。

そんなこと、ちょっと考えれば、分かりそうなものなのだが、
弥生には、
もう一つ考えられるコトがあった為、気が気では無かったようだ。


そんな弥生を“考え過ぎだ”と、強い口調で言い聞かす父親は続ける。


「大丈夫!あの男が、明のことを知るわけがないんだから!」


この時、明についての話だと言うことが分かった将人だった。

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