お家に帰ろう。
「当り前だ。」


将人は、明をそっと引き寄せると、おでこに軽くキスをしてみせた。


「ん?仲直りのつもり?」

「うん。口ん中切れてて、たまに血の味がするから。」

「どれ?」

「やめろ。イテーし。」

「早く治しやがれ。」

「はしたない言葉を。」

「ま、浮気の心配はないけど。」

「当然でしょ。」

「お節介な女友達が来るんじゃないの?」

「来ないよ。」

「怪しいなぁ」

「そんなに心配?」

「大人の女は“したたか”だからぁ。」

「…明。」

「ん?」

「俺のどこが、そんなに好きなの?」

「……ん〜どこだろ?」

「おい。」

「ただ、安心できるの!はっきり言って、ときめいたりすることはあんまりないけど。」

「ときめけよ。」

「えー。」

「なんだよ。」

「どちらかと言うと、あたしは恋愛に、やすらぎを求めてるタイプだから。」

「16歳がそんなんでイーのか?もっとハジケたりしたいんじゃねーの?」

「べつにイーもん。」

「なんか俺、束縛とかしてね?」

「してして!その方が実感が湧く。」

「堂々とデートもできねーし。」

「なに?不満なわけ?」

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