彼岸花の咲く頃に
俺の方に向き直り、姫羅木さんは語り始める。

その表情は緩みも笑みもない、いたって真剣そのもの。

「前にわらわは善狐と話したな…善狐は神格化し、人間に祀られる存在…その代わり有事の際にはその神通力を貸し与える…ならば有事とは何か…千春、わかるかの?」

「え…」

突然言われてもピンと来ない。

沈黙する俺に助け舟を出すように。

「人間がしでかした悪さには、わらわは手出しはせぬ。例え人死にが出たとしても、それは人間が解決すべき事象じゃ…じゃが…それが『人間以外のものがしでかした悪さ』だとすれば話は別になる」

姫羅木さんの声は、幾分トーンが落ちていた。

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