秘密の誘惑
最上階に向かうエレベーターの中、萌はため息を吐いた。


タマラにあんな事を言われた後、自宅へ帰ろうと思っていた。



だけど、ディーンに会いたい気持ちは抑えられない。



萌は待っていると答えたのだった。



電話を切ったディーンは眉根をひそめた。



様子がおかしかったように思えたのだ。



「ディーン様、ぼんやりなさるお時間はありません」



カーティスが厚手のファイルの束を数冊机の上に置いた。



「これは?」


「本社からの議事録、取引関係の書類、それに監査書類です」



カーティスがしれっとした顔で言う。


「まったく・・・殺す気か?」


「仕方がないです 叔父上のお体の具合が芳しくないのですから」



< 338 / 404 >

この作品をシェア

pagetop