純情恋心

「あたしはっ……先輩が好きです……っ、だから、傍にいさせて下さいっ……」

あたしがそう言うと、高遠先輩はあたしの肩に手を乗せた。

その時向けられた眼差しには、優しさを感じられないけど……

『どうして君は、傷付く事を選ぶの……?』

弱々しく発された言葉と、辛そうな表情に胸が締め付けられる。

どうして高遠先輩は、自分が辛そうな顔をするの……?

本当に辛いのは、傷付けようとする言葉を向けられる、あたしのはずなのに……。

「あたしだって……傷付きたい訳じゃないですっ……!! でも、だけど……っ、先輩が……」

『俺の意見なんて聞かなくていいんだよ……!』

「っ、……どうして、ですか……?」

――高遠先輩は、やっぱり矛盾している。

言う事を聞けと言ったり、聞かなくていいと言ったり……その度にあたしが理由を問いかけて。

そして返されるのは、いつも決まって冷たい言葉……。

『……ごめん、もう今日はこんな話やめよう』

「っ、何で……」

『これ以上はまだ話せないんだよ……!! ……話す勇気が、決意が定まらないんだ……』

「………」

話す勇気……、決意……?

高遠先輩の言葉の意味がよくわからなくて、あたしは潤む瞳で高遠先輩を見つめる。

だけど高遠先輩はあたしから顔を背けると、不意に立ち上がった。

そんな行動に、胸がズキンと痛む。

あたしはしゃがみこんだまま、高遠先輩を見上げた。

あたしに背を向けている高遠先輩を見ると、突き離されたように感じて、酷く悲しくなって涙が溢れてしまうのに……。

高遠先輩の言葉全ての意味を理解しようとする心が、きっと……その悲しさをバネにする。


――片恋の行方、切なき心


高遠先輩が全てを話してくれるのを、あたしは待ち続ける。

例えそれで、自分が傷付く事になっても……。

< 75 / 184 >

この作品をシェア

pagetop