【件名:ゴール裏にいます】
女の子二人は生地の薄いキャミソールでブラは着けていない。
ここあさんは黒いキャミソールにガーターベルトとストッキングもパンツも黒。
ももちゃんは白いキャミソールで白のニーソックスとパンツ。

ランジェリーパブなんだからその格好が当たり前なんだろうけど、慣れていない僕にとって二人の下着姿は刺激的だ。

良く知りもしない女の人のほぼ裸に近い格好を見て良いのだろうか?等とつい考えてしまう。

安いブランデーの水割りでとりあえずの乾杯。

「ねぇねぇ、お名前は何て言うんですか?」

不意にももちゃんに話し掛けられ水割りを吹きそうになるのを堪えた。

権田先輩とここあさんは良い雰囲気で二人の世界へと旅立ってしまい、そこへ入れないでいたももちゃんは僕の方を向き直り、捨てられた子犬みたいな目で僕を見ていた。

「ゆうじ。勇次って言います」

「へぇ〜、格好良い名前ですね。歳はいくつですか?」

「何か質問責めですね・・良いですけど、23です」

「ごめんなさい!今日初めてで何を話して良いか分からなくて・・それに会話が途切れると怒られちゃうんです、マネージャーに・・」

「僕の方こそごめんなさい。僕も女の人と話すのが苦手でつい意地悪な事言ってしまいました」

「そんな!謝るのはこっちですから!」

僕とももちゃんはお互いを見つめ合って笑った。

「良かったです。初めて付いたお客さんが勇次さんで。夕べは緊張して眠れ無くって」

「勇次珍しいな。お前がこんな所で笑うなんて」

話声が耳に届いていたのか、先輩が僕らの会話に割って入ってくる。

「あら、こんな所で悪かったですね」

ここあさんが便乗して一気に場の雰囲気が良くなった。

緊張が溶けたのか、その後のももちゃんは生き生きと話しとても楽しい時間を過ごす事が出来た。

45分が過ぎ僕は席を立った。
権田先輩は一人延長して残ると言う。

「じゃ、また来週会社でな」

先輩の言葉に促されるようにして店の出口へと向かった。

見送りに着いてきたももちゃんに「じゃあまた」と言い、店の外に出ようとした時にももちゃんから紙切れを渡された。

「本当はいけないんだけど」

と言って渡された紙にはももちゃんの携帯番号が書いてあった。


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