【件名:ゴール裏にいます】
権田先輩から聞き出せたのは情報提供者は町造部長と言う事。やはりこの移動には那比嘉さんの父親が絡んでいる事だった。
那比嘉さんの父親は旅行代理店も経営しており航空チケットを用意する事などたやすいらしい。
僕は支社長と那比嘉のおやじにハメられようとしていたのだった。
(何が栄転だ、何が出世街道だよ!)
僕は自分で自分が情けなくなって来ていた。
町造部長と権田先輩が気を利かせてくれていなければまんまと奴らの思う壷にハマっていたとは。
この日の僕は荒れに荒れた。
「沙織ちゃーん、冷酒ちょうだーい」
「もう、勇次くん飲み過ぎじゃないの?彼女に言い付けるわよ!あーっ、ほらほらほら・・」
「先輩っ!次行きましょうよ、次!こんな酒も出さないような店は出て行ってやる!」
「勇次、大丈夫かお前」
「大丈夫だいじょーぶ!ほら沙織ちゃんおあいそしてっ」
そう言って立ち上がった僕の足はふらついていた。
「今日は僕の送別会ですよっと。何てったって栄転なんだから」
「ちょ、送別会ってどう言う事よ」
「沙織、悪ぃ。また今度詳しく話すわ。おあいそしてくれや」
「先輩!今日は先輩のおごりですからねぇ」
「分かった分かった。ほら勇次まっすぐ歩けるか?」
僕と権田先輩は居酒屋『とり蔵(ぞう)』を出てタクシーで『果樹江悶』へと向かった。
「キャー、勇次くん久しぶりぃ」(何で電話くれないのよ)
「電話?何それ?」
僕らのテーブルに付くなりももちゃんが僕に飛びついて来た。
ももちゃんは僕が指名したらしい。良くは覚えていないが。
権田先輩はいつものようにここあさんを指名していた。
二人共今日もセクシィな下着姿だった。
僕らのテーブルは大いに盛り上がり、僕は悪酔いしそうな安いブランディを浴びるほど飲んだと言う。
――――――気がつくと朝だった。
頭の痛いのと喉の渇きのせいで目が覚めた。
見覚えの無い部屋を見渡す。
生活の匂いのまったくしない部屋だった。十畳程の部屋の真ん中に置かれたキングサイズのベッド。
その上には僕の他にもう一人寝ていた。
(権田先輩・・?)
掛けられた布団がモゾモゾっと動いた―――。