下心と、青春と


この二人の会話からすると、どうやら二人とも傘がないようだ。


しかも、会長が残念そうな顔をしている。


私は、敏感な方ではないが、コレくらいならわかる。


会長は、副会長と一緒に帰りたいんだな。


「では、私は昇降口で待ってます」


「ああ」


三年の昇降口は二年とは違う。


私は、副会長が行ってしまうのを待って、会長に自分の折り畳み傘を差し出した。


「な、なんのつもりだ」


「傘、貸してあげます。お二人とも傘持ってないんですよね?どうぞ。一緒に使って下さい」


「しかし、それでは……」


「私は、ここに置き傘があるんで、大丈夫です」


置き傘があるなんて、真っ赤な嘘だけれど、そうでも言わないと会長は納得しないと思ったのだ。


しかし、会長はまだ渋っているようで、眉毛を寄せている。


私は、とどめのつもりで、ニコッと笑って「どうぞ」と言った。


「……恩にきる」


< 54 / 81 >

この作品をシェア

pagetop