下心と、青春と


会長はまた顔を赤らめて、私から傘を受け取って、副会長のところに走り出した。


「この礼は、いつか必ず……!」


その言葉だけで十分ですよ、という感じだ。


「うまく、いくといいなあ」


なんて言っている場合ではない。


私は今傘がない。


どうしたものか。


ここにある置き傘を使うという手もあるが、ちょっと気がひける。


かといって、この雨の中宇佐見くんのようにカバンを傘代わりにしたら、風邪ひくこと受け合いだ。


それに、カバンの中の教材がびしょぬれになってしまう。


きっと宇佐見くんはカバンの中に教材なんて入ってないのだろう。


ただの憶測だけど、あってると思う。多分。


「さて、どうしたものかなー」


そろそろ下校時間だ。


下校時間を過ぎても雨がやまなかったら、ぬれて帰ろうかな。


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