近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』
☆喫茶店の超監督(2)

ハルヒはとてててと駆けてきて、カウンターの俺のとなりにぴよって腰掛ける。
二次元でも三次元でもないこの2.5次元的いきものには、そういう表現がよく似合うように思えた。げんきっこどうぶつ少女だ。

「まいら、今日は部活は?」
「本名プレイ禁止!今日はハルヒなんだから空気読んでよね」

本日のまいら様は涼宮ハルヒらしかった。

この娘は7歳の若さにしてインターネットデビューを果たし、IT知識をスポンジのように吸収し、今ではブログでもFlashでもなんでも自在に設置してプログラムまで好き勝手組んで遊ぶネット超人と化している。

まあ、積極的に超人化させたのは俺なんだが。この子は元々頭が良かったんだろう。

好きなサイトは2ちゃんねるとニコニコ動画。なんていうか、まっしぐらです。
てか今時の子は、本名を呼ぶことをプレイというのか。

「部活なら午前で終わり。で、今日は何して遊んでるの?」
俺のノートパソコンを覗き込んできた。草のにおいがする。
「遊んでねーよ!仕事だ仕事」
「なんだ、『着いったアッー!』か」

がっかり風味だった。汗かいたグラスの俺のレモンティーを勝手にちゅーと飲んでいる。

『着いったアッー!』というのは、実は俺が5年前に自分で作ったウェブサービスだ。

もともとは、Twitterという
「今なにしてる?」
をてけとーにとっちらかして書き込める一行書き込みサービスがあるんだが、俺はこのシステムをしまなみ海道の観光客専用にカスタムチューンした。

具体的には
「今なにしたい?どこ行きたい?」
をコンセプトに、この一行書き込み機能とグーグルマップを連携させ、観光客の声がここに集中して集められるように画策したのだ。

狙いはそこそこ当たった。いろんな人たちが
「うまい尾道ラーメンどこ?」
とか
「魚たべたい!」
とか、自分の座標情報つきで好き勝手に書き込んでくれるもんだから、俺はこの島で契約した食堂やおみやげ店などに誘導しまくり、そして紹介料をいただく。
俺の生活はこのシステムのおかげで成立しているようなものだった。


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