近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』

☆第三次接近遭遇

☆第三次接近遭遇(1)

サンセットビーチの空には、うっすらと夕日のオレンジが差しかけている。
キコキコと情けない敗北音を響かせて走る俺様号のハンドルには、
夏目漱石の「こころ」と
太宰治の「人間失格」、
午後ティーと缶ビール3本が入ったビニール袋がぶら下がっている。
生まれてきてすみません。

どうしてこうなんだろう。ビビビの人と一緒になると、おかしなテンションになっていつも頭も口も回らなくなる。

そりゃあこんな歳だ、少ないながら何度か女の子とは付き合った。
でもまともに付き合えたのは何のビビビもこなかった人だけだ。気づいた時には付き合ってるモード突入という感じの、まあ自然な恋愛だったように思う。ビビビが無かったからこそ、お付き合いが成立したのだ。

だが、本当に俺の本能が要求している、ビビビが来た人間とだけはどうしても結ばれることがなかった。
そして何年も何年も、さすがに「あんたバカぁ?」と言われそうなくらいにその片想いを引きずるのだ。

どうして俺は、本当に好きになった人と、結ばれることがないんだろう。
間違いなく今回もそのパターンだ。いやそれ以前に彼女は国に帰ってしまうか。ハァ。
今日はもう寝てしまおう。とびきり明るいやつがいい。

俺は喫茶店の端っこに自転車を停めると、ハンドルからビニールを外そうとした。途中、取っ手が呼び鈴に引っかかってちりーんと鳴ったりした。

カラコロバタン!
ハルヒのまいらがどたどたと、喫茶店の扉から駆けてきた。
「兄さん、事件です!」

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