近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』
☆自意識ピエロ(3)

それを思い出してまた激しくきんちょーし始めた。ぐるぐると恋愛性の脳内麻薬が放出され始め、身体がふわふわと幸せにも切ない綿毛のようなものに包まれる。
彼女は昼まで大三島にいたはずだ。いま彼女はどこにいるだろうか。

・・・なんてことを考えていると、
正面から、ものすごく見覚えのある顔と神尾観鈴のコスプレが自転車でシャーと突進してきた。

『あ』

ふたつの「あ」が重なった。
腹の底から甘いものがはじける。
彼女は俺とすれちがいざまにブレーキをかけ、俺の背中3メートル先で停止した。
硬直、する。

「き、きのうは、どうも」
「あの、その、どうも」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

二人で頭かいてる場合か。
まともに顔も見られない。
息が苦しい。
身体が不自然体のカタマリになる。
何か言わなきゃ。何か言わなきゃ!おーい、なにかーッ!

「・・・じゃ、じゃあ」
「・・・じゃ、じゃあ」

ペダルに足をかけると、俺は第一宇宙速度でその場を逃げ出した。
バカバカ俺のいくじなし。

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